震災2年

2年前の3月11日は金曜日。当院の休診日でした。

私は自家用車で、大津付近を走行中。カーナビのTVで大地震のことを知り、大慌てで帰宅しました。

ところが、家族はだれも地震のことを知らず、安穏とTVを観て過ごしていました。

自宅のリビングのTVに映っていたのは、録画番組でした。

さすがに外部ビデオ入力画面には、地震速報のテロップは出ません。

では、一般のTV放送を見ていたとして、震災直後にはどのような放送の展開があったのでしょう。

その瞬間の各局の放送画面を、YouTubeで見ることができます。便利な世の中ですね。

在京キー局全部を、マルチ画面で同時記録したものまであります。これがなかなか面白い。

地震発生(2011年3月11日14時46分42秒)直後の数分間の対応は、各局でずいぶん異なり興味深いです。

それではじっくりと、検証してみましょう(長いです)。

(1)NHK

国会中継中の14時46分54秒、アラーム音とともに、緊急地震速報を出しました。さすがに早い。

地震発生から12秒。まだ揺れ始めの段階です。議員の動揺ぶりを映した後、国会中継は88秒後に打ち切り。

(2)TBS

懐かしのドラマ「3年B組 金八先生」を再放送中。NHKよりも96秒遅れて、地震速報のテロップを表示。

その74秒後に金八を打ち切り、報道番組へ移行。民放ではいちばん迅速な対応です。

(3)日本テレビ

状況的には最も有利だったはずです。「情報ライブ ミヤネ屋」を生放送していたのですから。

ところが地震発生時には、ちょうどCM中。これがまた長い長い。CMがあけるまで86秒。

やっとスタジオが映ったかと思ったら、わずか30秒後にはまた、60秒間のCMに再突入。

やっとCMがあけて、また地震の映像が出たと思ったら、なんと10秒後にまた60秒間のCMに再々突入。

情報ライブとは名ばかりです。もはや視聴者は、NHKに切り替えてますよ。

(4)テレビ朝日

ドラマ「おみやさん」を再放送中。NHKより127秒遅れてテロップを出したものの、おみやさんは続行。

その後2分間、テロップを表示したまま、ドラマは終了まで放送。よほど重要なエンディングだったのか。

次いで、翌日から放送予定のドラマ「砂の器」の予告編に突入。さすがに35秒で打ち切り、報道番組へ。

(5)フジテレビ

韓国ドラマ「タルジャの春」を放送中。地震発生時はちょうどCM中でしたが、CMあけてもドラマは続行。

地震発生の3分後に突然、報道画面に切り替わったと思ったら、あろうことか、その13秒後にドラマに復帰。

その後、男性が女性の下腿に薬を塗るシーンが63秒間続き、ようやく報道番組開始。

せっかく一時は報道画面になったのに、なぜドラマに戻ったの? 薬を塗るシーンは、それほど重要?

大地震時には、NHKにチャンネル合わせるしかないですね。

タバコとPM2.5

「自由に喫煙できる居酒屋の空気は、大気汚染がひどい日の北京と同じ」

日経がこのような論調で、受動喫煙の問題を提起しています。両者のPM2.5濃度が同程度だというのです。

これを聞いて私は、北京市内は居酒屋並みにモウモウと煙っているのかと、あらためて驚かされました。

記事の趣旨は、大気汚染を怖がるよりもまず、身近な受動喫煙を怖れなさい、ということです。

それはわかりますが、例えが悪いと思います。

居酒屋などは多くの場合、受動喫煙を覚悟の上で利用します。それはある意味、自己責任です。

ところが、大気汚染はそうではありません。避けようがないのです。

そもそも、何かを例えて表現するときは、「既知のもの」を引き合いに出して「新規のもの」を説明します。

しかし日経の記事では、これが逆になってしまっています。

私たちは、中国から飛来するPM2.5には悩まされていますが、北京の大気汚染を実感したことはありません。

一方で分煙のできていない居酒屋は、だれもが身をもって知る、劣悪な大気環境です。

それなのに、北京を引き合いに出して、居酒屋のひどさを説明してどうしますか。逆でしょう。

ネット選挙

ネットを使った選挙運動が解禁される方向です。どんどん解禁すべきでしょう。便利だし。

候補者の経歴や政見がホームページにまとめてあれば、投票前にじっくり読み込んでみたいものです。

Facebookなどでディスカッションができれば、なおいい。候補者が身近になります。

その意味でネット選挙は、<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-436.html" target="_blank" title="Facebook活動の活発な安倍首相">Facebook活動の活発な安倍首相</a>に有利な施策とも言われています。

究極的には、ネット投票へと向かうのでしょうか。投票率は格段に上がると思われます。

「マイナンバーICカード」による認証などでログインし、PCやスマホの画面上で投票する。未来的ですね。

自宅から投票できない人は、所定の投票所のパソコンで「投票」します。

投票時刻が終了したその瞬間(午後8時0分0秒)に、開票率100%で、全当選者が確定します。

刻一刻と開票結果を速報していく従来型の選挙番組は消えますが、考えてみたらそれも不毛な番組でした。

開票の途中経過がどれだけ緊迫していても、最終的に当確が確定した後には、何の感慨も残りません。

そんなことよりも、開票結果を受けての解説番組の方が、よほど有意義でしょう。

現行法では、選挙期間中の「ネット上の文書や画像の更新」は禁じられています。

もしもこのブログの更新が途絶えたら、私がどこかの選挙に出ている可能性も考えて下さい。

ドラッグ・ラグ

3/7付の週刊文春に、池上彰氏による「ドラッグ・ラグに泣いた安倍首相」という文章がありました。

新薬がもっと早く国内承認されていれば、前回首相を辞任することもなかったのに、という内容です。

残念ながら、本質をとらえ損なった記事だと思うので、私なりにこの問題点をとり上げます(長いです)。

安倍氏は2007年9月、難病「潰瘍性大腸炎」の病状悪化に耐えきれず、首相を辞任しました。

激務をこなすうちに、それまで使っていた治療薬「ペンタサ」では、症状が抑えられなくなったのです。

再び首相になれたのは、2009年に発売された新薬「アサコール」のおかげだと、本人がそう言ってます。

「この薬は欧米では20年くらい前から使われていたのですが(中略)承認が遅れました。本当に残念です」

安倍氏がこう言うように、欧米で使用されている薬が日本で承認されるまでの遅延が、問題となっています。

これが「ドラッグ・ラグ」です。欧米と日本との、薬の発売時間差は、平均2.5年だそうです。

その原因は、国内での「治験」や「審査」に時間がかかるためだと言われてきました。池上氏も同じ論調。

しかし詳細な研究によれば、治験や審査に要する時間は、米国と日本で大差ないことがわかってきました。

本当の問題は、治験以前の「治験着手時期の遅れ」であり、これがドラッグ・ラグの主因だといいます。

実際に、ゼリア新薬によるアサコール治験は2004年に始まり、その後4年で製造承認にこぎ着けています。

もう少し早くならんか、とは思いますが、治験と審査の段階で、異常に時間がかかったわけでもありません。

その意味で、池上氏は本質をとらえ損なっていると、私は言っているのです。

最大の問題は、90年代には欧米で普及していたこの薬の、国内治験が2004年にやっと始まったことです。

その理由は、すでにペンタサが普及していた日本で、さらにアサコールを発売する動機がなかったからです。

新薬開発の主要なインセンティブは、臨床的重要度ではなく、市場規模(=企業の利益)なのです。

潰瘍性大腸炎のような、国内患者数が少ない難病の治療薬は、需要が見込めないので儲からないのです。

こういった難病治療薬を「オーファン・ドラッグ」といいます。「オーファン」はみなしごの意味です。

患者数が少なければ治験もやりにくい上に、開発コストに見合う収益も見込めず、開発着手が遅れるのです。

オーファン・ドラッグの開発は社会貢献の側面があり、製薬会社任せにせず、国家的支援が必要です。

理解のある安倍首相の、ドラッグ・ラグ解消政策に期待します。

森林組合

「農協」を “JA” というように「漁協」のことを ”JF” というそうですね。<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-516.html" target="_blank" title="ヒラメ">ヒラメ</a>を調べていて知りました。

JAは “Japan Agriculture” の、JFは ”Japan Fisheries” の頭文字です。

では「農林水産業」の残りの一角「林業」の協同組合組織は何なのか。気になるので「調査」しました。

調べてみると、それは ”J Forest” でした。漁協とかぶってしまうからか、”JF” にはしなかったようです。

不思議なことに「林業協同組合(林協)」ではないのです。「森林組合」なのです。調査は続きます。

たとえば農協は「農業協同組合法」、一方で森林組合は「森林組合法」によって位置づけられています。

前者は「農業者」を対象とし、後者は「森林所有者」を対象としています。

前者は「農業者による生産力増進」を目的とし、後者は「森林そのものの保護と生産力増進」が目的です。

つまり、農協は「農家」のための組織であり、森林組合は「森林」のための組織というわけです。

森林資源には、国土保全にもかかわる公共性があるので、このようになったようです。ひとまず納得。

さらに調査は続きます・・・

たらい回し

救急患者の「たらい回し」がまた、ニュースになっています。

埼玉県で急病患者が、36回にわたって「受け入れ拒否」にあい、2時間半後に死亡したとのこと。

そのような結果に至ったのは残念なことであり、問題点を掘り下げていく必要があります。

しかし、マスコミが好んで使う「たらい回し」という言葉は、不適切だと思います。

医療現場の実態を考慮せず、結果だけを見て医療機関を非難するニュアンスがあるからです。

しかしそれ以上に、「受け入れ拒否」という言葉には、マスコミの、医療機関への悪意を感じます。

病院はやむを得ず受け入れを断っているのであり、「受け入れ困難」とか「受け入れ不能」と言うべきです。

例えばある人が、どうしてもカレーパンを食べたくなったとします。

ところがスーパーに行くと「売り切れ」。この場合「販売拒否」ではありません。「販売不能」です。

別のパン屋に行くと、団体客がカレーパンを買おうとしている。店主には他を当たってくれと言われる。

他のコンビニに行けば、消費期限切れなので売ってもらえず、次の店でも断られ、その次の店でも・・・

これを、たらい回しにされたと言うでしょうか。

いいえ、どの店にもカレーパンがなかっただけの話です。つまり、カレーパンが足りないのです。

病院も同じ。医師や看護師やベッド数が不足しています。

救急を担当する医師の多くは、労働基準法に抵触するほどの<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-499.html" target="_blank" title="長時間労働">長時間労働</a>を強いられています。

ベッド数は、医療スタッフの数に応じた規定があるので、やみくもに増やすわけにはいきません。

病床稼働率(入院患者の埋まり具合)が、限りなく100%に近くなければ採算がとれない仕組みも問題です。

「受け入れ拒否」と報じられた病院は、急患を受け入れる余裕がないから断っただけなのです。

救急搬送を要請された25の医療機関が、のべ36回連続で受け入れ不能だったという状況こそが大問題です。

音楽配信

定額料金で聴き放題の「定額音楽配信サービス」が、次々と立ち上がっているようです。

しかしどうも、私にはピンときません。ほかの「聴き方」と比べてみました。

(1)定額配信

音楽を聴く時間・頻度が少ない私には、「聴き放題」はムダなサービス。どう考えてもコスト高です。

楽曲は所有するものではなく、いつでも聴ける環境を買うのだ、という割り切りも必要。これも私には無理。

(2)ダウンロード

AppleのiTunesとiPodが構築したともいえる、標準的な音楽の聴き方。楽曲を所有している感があります。

クラウドサービスと連携して、スマホやPCで同期できるので、いつでもどこでも聴けて十分便利です。

(3)CD

しかし思い入れのある曲は、CDを買って、ちゃんと座って、スピーカーで、やや大音量で聴きたい。

何よりも、所有欲が満たされます。欲しいCDは、あまり聴かなくてもいいから所有したい、とさえ思う。

(4)レコード

もはや私はプレーヤーを所有していませんが、レコードはどこかに保管しています。たぶん段ボールの中。

音質の問題で言えば、あのノイズはジャズに最適。針を落とすときのわずかな緊張が、聴く態勢を整えます。

(5)生演奏

大富豪ならコレ。自宅にコンサートホールを併設し、世界中のミュージシャンや交響楽団に演奏させます。

その日の聴きたい曲目に合わせて演奏者を招聘しますが、到着するまでに時間がかかるのがネックです。

ヒラメの養殖

まえに<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-513.html" target="_blank" title="ヒラメの話">ヒラメの話</a>を書きましたが、調べてみて驚きました。

出まわっているヒラメの大半は養殖ものらしいですね。機会があったら「裏側」を見て確認してみましょう。

ヒラメの養殖日本一は大分県。全国の3割を生産しているそうです。

大分の水産物と言えば「関アジ」「関サバ」が知られています。「城下カレイ」も有名です。

それなのにこんどは、養殖という手法でヒラメにも手を出しているわけです。

佐伯市など県南部の沿岸部で、しかし海面ではなく、海水をくみ上げて陸上で養殖されているそうです。

あんまり泳ぎ廻らず、酸素消費量も少ないので、全国的にもヒラメは陸上養殖の方が主流のようです。

かつて大分県上津江村(現在は日田市に合併)の山の中で、ヒラメの養殖が行われていました。

どうせ陸上で養殖するのなら、沿岸部でなくても内陸部でも同じでしょうけど、大胆な発想です。

「森のひらめ」ブランドで地域興しに生かす計画でしたが、採算がとれず中止されたようです。

それにもめげず大分県は、陸上養殖を発展させ、日本一となりました。

最近の大分漁協のいちおしは「かぼすヒラメ」だそうです。

やはり大分県が生産量日本一の「かぼす」をエサに使用した、特選ヒラメです。

かぼす成分の蓄積によって、肝の臭みが消え、エンガワがさっぱりしているのが特徴だとか。

大分の第一次産業は貪欲ですね。

珍渦虫

ナゾの生き物「珍渦虫」の研究が話題になっています。

なによりも「ちんうずむし」という読み方にまず、やられました。

そもそも「うずむし」という生き物のことを、私はよく知りませんでした。扁形動物の仲間らしいです。

「扁形動物」には、渦虫のほかに、吸虫や条虫などがいるそうです。

吸虫と条虫なら、私も知っています。寄生虫の一種です。学生時代に習いました。

一方で渦虫は寄生をせず、水中や陸上などで生活しているそうです。有名なプラナリアも渦虫の仲間です。

で、珍渦虫ですが、驚いたことに渦虫の仲間ではなく、扁形動物ですらないそうです。

口と肛門は共通で、頭や足や触覚などの感覚器官がなく、中枢神経系や生殖器官すら退化しているとのこと。

食べた口から排泄し、何も触れず、何も感じず、何も考えず、子孫も残さない?

それでいて、大きさが1cmほどもあるので、へんてこりんな生き物というほかありません。

このたび国際研究チームが、欧州の海底に住む珍渦虫の、卵からの「ふ化幼生」の成長を観察したそうです。

ていうかまず、どうやって卵を産んだのか、珍渦虫。

おまけに、幼生には、足があり、肛門があり、中枢神経もあったとのこと。

ということは、成長に伴って、それらが退化したということになります。

使わないから退化するわけで、足と肛門はまだわかりますが、中枢神経もですか。

頭は使わないと退化する。戒めにしましょう。

中国とカレー

意外なことに中国では、カレーライスがほとんど普及していないそうですね。今朝NHKが言ってました。

ハウス食品などが、中国向けカレーの開発に本腰を入れているとのこと。

そりゃそうでしょう。中国13億人の1割にでも受け入れられたら、それだけで日本と同じ消費人口です。

ハウスのHPによると、十数年前から、上海など各地に日本式カレー店をオープンしているようです。

さらに家庭へと進出すべく、レトルトカレーやバーモントカレーを発売しているそうです。

「バーモントカレー」には、中国人の味覚に合わせて「八角」などの香辛料を採り入れているとのこと。

どんな味なのでしょう。ぜひ「逆輸入」して食べてみたいですね、中国風の日本式カレーを。

ところで八角といえば、インフルエンザ治療薬タミフルの原料としても知られる、「トウシキミ」の実です。

タミフルはスイスの製薬会社「ロシュ」が独占製造していますが、原料の八角はその多くが中国産です。

それがタミフル供給における、最大の不安材料となっています。

<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-120.html" target="_blank" title="レアアース">レアアース</a>でも同様ですが、中国という国は、先進諸国の肝腎な部分に、いちいち、からんできますね。

さいわい、純粋な化学的タミフル製造法が次々と開発されつつあり、「脱八角」が進みそうです。

これはちょうど、トヨタが「<a href="http://tsuruhara9linic.blog116.fc2.com/blog-entry-392.html" target="_blank" title="脱レアアース依存">脱レアアース依存</a>」を進めているのにも似ています。

中国のおかげで、皮肉にも、科学や技術が進歩していきます。