「新型出生前診断」が来月から、あくまで臨床研究という形で、日本でも始まります。
簡単な血液検査によって、胎児の染色体異常が高い精度で判明する検査ですが、賛否が分かれています。
たとえば、ダウン症という染色体異常の検査精度は、「感度」99.1%「特異度」99.9%だそうです。
これを見て、すごい的中率だと思うのは間違いです。
そもそも、感度とか特異度の意味がわかりにくいのが問題です。そこで具体的な数値をあげて考えてみます。
病気Aの人を検査して、その病気を正しく感知できる確率が「感度」です。それが99.1%だとしましょう。
裏を返せば、病気Aであるにもかかわらず陰性となる「偽陰性」の確率が0.9%あるということにもなります。
病気Aでない人を検査して、正しく陰性と判定できる確率が「特異度」です。それが99.9%だとします。
裏を返せば、病気Aではないにもかかわらず、陽性と判断してしまう「偽陽性」の確率が0.1%あるわけです。
ここで重要なポイントは、この病気A自体の発生率です。たとえば出生時の発生率0.1%と考えて進めます。
妊婦が10万人いれば、病気Aの子が100人生まれる計算になります。残る99900人は病気Aではありません。
病気Aの子100人のうち、感度99.1%の検査によって、正しく陽性と診断される人数は約99人となります。
病気Aではない子99900人のうち、特異度99.9%の検査で、偽陽性になってしまう人数は約100人います。
10万人全員を検査した場合の陽性者は、全部で199人となりますが、そのうち本当の病気Aは99人だけです。
つまり、発生率0.1%の場合、的中率(厳密には陽性的中率)はたったの50%というわけです。
しかし、病気Aの発生率が0.3%の場合には的中率は75%となり、1.0%なら的中率91%と高くなります。
ちなにみ、30歳、35歳、40歳の妊婦のダウン症出生率が、それぞれ約0.1、0.3、1.0%です。
年齢や病歴などからハイリスクと考えられる妊婦に限れば、的中率の高い検査となるわけです。
しかしもっと大きな問題は、陽性と診断された場合の、その後です。これについては別の機会に書きます。