「スーパーラット」とよばれる、殺鼠剤では駆除できないネズミが、都会の繁華街で増えているそうです。
殺鼠剤を使い続けたせいで、抵抗力のあるネズミが生き残り、それが増えてきたのだと考えられています。
中国では、さらに強力な「超スーパーラット」が出現していると、昨日のNHKニュースが報じていました。
昔から、そして今も、殺鼠剤としてよく使われているのは「ワルファリン」という薬です。
これは医療用の「抗凝血薬」と同じ成分で、医薬品としての商品名は「ワーファリン」です。
心臓病や深部静脈血栓症などの患者さんでは、血液を「サラサラに」するために、この薬を使います。
薬が効きすぎると出血の危険があるので、その効き具合を頻繁にチェックする必要があります。
当院でも、ワーファリン内服中の患者さんは、原則として毎月1回、PT-INRという血液検査をしています。
100年近く前、カナダや北部アメリカで、牛が出血死する奇病が発生しました。
当初は伝染病と思われましたが、やがて、牛が食べた「腐ったスイートクローバー」が原因であると判明。
そこから「牛を出血死させる」物質が抽出され、これを元にして、ワルファリンが合成されました。
この血液凝固機能を失わせる薬は、その後、殺鼠剤として使われるようになりました。
ネズミが殺鼠剤を食べ続けると、血液が異常にサラサラになり、体内で出血して死んでしまうわけです。
血液が凝固するためには、血液凝固因子というタンパクが必須です。
凝固因子は肝臓で作られますが、それが合成される際には、ビタミンKが必要です。
ワルファリンはビタミンKの作用を低下させるので、その結果、体内の凝固因子が不足することになります。
そうすると血液の凝固機能が低下し、血液がサラサラになるわけです。
ビタミンKは、緑色野菜などの食べ物にも含まれていますが、その多くは腸内細菌が体内で作っています。
納豆菌もまた、ビタミンKを作るのが大得意な細菌です。
納豆を食べるだけで、ワーファリンの作用が簡単に打ち消されてしまうほどの効果があります。
だからワーファリン内服中の患者さんは、たとえ少量でも、納豆だけは食べてはなりません。
殺鼠剤に対して抵抗力のあるスーパーラットとは、ワルファリンが効かないネズミということです。
長年ワルファリンを食べさせられたせいで、ワルファリンを解毒する能力が異常に高くなったのでしょうか。
それともビタミンKの活性が異常に強いネズミなのか。もしかすると、こっそり納豆食べてるのかも。