外科系の学会や研究会では「ライブ手術」というものが時々行われます。
手術を生中継し、執刀医らが解説を加えながら、手術の詳細をリアルタイムで披露するものです。
別の会場のスクリーンに映し出された手術映像を、多くの参加者が見て、執刀医に質問したりもできます。
ライブ手術の問題点については、私も思うところがありますが、今日は言及しません。またいつか書きます。
外科医の修練は、他の外科医の手術を見るか、指導医の下で自分が執刀するかの、いずれかで行われます。
なので一流の外科医による最新の術式を「ありのまま」見ることは、学術的にも教育的観点からも有益です。
しかし、上手な手術を見ることだけが勉強ではなく、失敗例に学ぶことも多々あります。
「スーパードクター」とか「神の手を持つ」とも言われる大木隆生教授の記事を、週刊朝日が掲載しました。
大木教授が中心となって毎年行っている「ライブ手術」の途中で、患者さんが亡くなった問題です。
手術中の状態急変、心停止、救命措置などの「緊急事態」を、彼は生中継し続けました。
なぜ中継を中断しなかったのだろう、と思う方もいらっしゃるでしょう。
その理由は、その「失敗例」が、けっして「医療ミス」ではなかったからだと、私は思います。
どんな外科医でも、多数の手術をすれば、いつか遭遇するかもしれない「偶発症」というものがあります。
大木教授は信念をもって、参加者に貴重な経験を共有させようとしたのではないでしょうか。