ものもらいは、正式には麦粒腫という、まぶたのできものです。
かつて麦粒腫の治療で、私はひどい目に遭ったことがあります。
当時大学病院に勤務していたので、その病院の眼科を、勤務の合間に受診しました。
助教授の診察の結果、「ステロイドを注射して、さっさと治しましょう」ということになりました。
同業者(医者)の場合、得てして標準的な治療法ではなく、一番早く治る治療法が選択されます。
処置室のベッドに寝かされて、しばらく待っていると、若い女医さんが2人現れました。
2人でなにやら話し合いながら、注射の準備を始めたようです。
あとは助教授の先生の到来を待つばかり、と思っていたら、彼女らが寄ってきて
「では、まぶたに注射をします。動かないで下さい」
どうやら私は、若手医師のための実習教材となったようです。
まぶたに針が刺さり、ググッと痛みと圧力を感じます。
とその時、プシュッという音とともに、注射器と針がはずれ、薬液が私の顔面にまき散らされました。
「あっ、動かないで下さいっ!」
彼女たちはあわてて、どこかに立ち去りました。新しい薬剤を取りに行ったのでしょうか。
しばらくの間私は、まぶたに針が突き刺さったままの状態で、ひとり処置室にとり残されていたのでした。
軽い病気で大学病院を受診するものではありません。