「世界で一番はやいものは何と思う?」
ニュートリノではありません。世界中を騒がせた実験結果は結局、誤りでした。
思い出すのは、小学校時代の中村A君です。
彼がある日、冒頭の質問をしてきたのです。「世界一はやいものは何か」と。
私は即座に「光」と答えたのですが、彼はしたり顔で首を横に振り、「神経」と言い放ちました。
彼の説明によれば、右手で左手を触ったとき、その瞬間、左手がそれを感じているからだと。
「絶対違う」と、その時は思ったのですが、うまく反論できず、中村君は勝ち誇ったようにしていました。
私はどのように反論すべきだったのか。あれから40年以上、折に触れてそのことを考えてしまいます。
人間の神経を刺激が伝わるスピードは、毎秒1~100メートルだから、というのはダメです。
小学生にもわかるように説明しなければなりません。
右手で左手を「触ったとき」と、左手がそれを「感じたとき」の両者を、よく吟味してみます。
「触ったとき」というのは、左右の手の接触を目でとらえ、それが神経によって脳に伝わった時です。
「感じたとき」というのは、左右の手の接触を手で知覚し、それが神経によって脳に伝わった時です。
両者が同時であっても、それは、目から脳までの神経の伝達時間と手から脳までの神経の伝達時間が同じ、ということにしかなりません。
ああ、そう言えばよかったのか。
そもそも前者では、接触の様子が、光によって手から目まで伝わる時間が無視されています。
その時間が無視できるほど光ははやい、という前提がすでにあるわけです。
本当のツッコミどころはそっちなのかもしれません。