因果関係と補償

麻しんワクチン接種の3日後に、1歳の男児が急性髄膜脳炎で死亡したことがあります。

補償をめぐって訴訟となり、昨年高松高裁が下した判決が、波紋を呼びました。

医学的には、生ワクチンによる髄膜脳炎がそのように早い時期に発症することは、考えにくいことです。

しかし裁判所は、「因果関係は否定も肯定もできない」という専門家の意見をふまえ、

「死亡原因がほかに見当たらないので、予防接種と死亡には因果関係を認める」

という、医学界には多少驚きを与える判断を下しました。

つまり「疑わしきは被害者の利益に」という結論です。

ワクチンという「被告人」にしてみれば、「疑わしきは有罪」にされてしまったわけです。

今回の司法判断が一人歩きして、医療機関の風評被害やMRワクチン接種率の低下につながりはしないかと、心配になります。

このようなことになってしまう背景には、日本のワクチン被害救済制度の問題があります。

因果関係がなければ補償が認められません。

補償のために因果関係をこじつけるようになれば、ワクチンの危険性を過大評価することにもつながります。

因果関係の立証はあくまで科学的かつ厳正に行うべきで、被害者の補償はそれとは別の問題です。

米国のような、ワクチン接種後に生じた健康被害に対して、因果関係の有無にかかわらず補償を行う制度が必要です。