心臓外科医不足

熊日新聞の「読者のひろば」に私が5/20に投稿した文章が、今朝の紙面に掲載されたので、ここに転載します。

 熊大心臓外科の医局員不足が大きく報じられました。その原因は二つあると私は思います。ひとつは診療科による医師の偏在、もうひとつは心臓外科特有の問題点です。

 医師は毎年数千人増えているのに、部署によっては医師不足が深刻です。忙しい診療科の医者のなり手が少ないからです。とくに近年の医師研修制度によって、研修医は先輩医師の生活を目の当たりにした結果、現実的な選択をする傾向が強まりました。拘束時間が長くリスクも多い診療科と、そうではない診療科の医師とで、勤務医の給料がほぼ同じであることも問題。過酷な労働に見合った報酬にすべきです。

 心臓外科医としての技術を保つためには、年間50から100例の執刀を続ける必要があるとされています。それを満たす医師の数は、各医療機関にせいぜい2,3人。手術総数があまり多くない施設では、若手心臓外科医をどのように育てればよいのか、頭を痛めています。

 多忙、薄給、ハイリスクで、一人前になるのも困難な心臓外科。今回のことは、熊大に限った問題ではありません。志のある若者が心臓外科医になる道を閉ざさないために、医療行政と医学教育の両面からの制度改革を望みます。