数年前のある日、暇にまかせて国語辞典を読んでいたら(見ていたら、というよりも)、「痔」が「ぢ」のところに出ていないことに気がつきました。
「ぢ」ではなくて「じ」だったんですね。長い間ヒサヤ大黒堂にだまされていました。
当然、イボ痔は「いぼじ」であり、キレ痔は「きれじ」です。なんかリアリティーがありませんね。
そんなことを思いながら辞書を読み進むうちに、驚愕の事実に気づきました。
「ぢ」で始まる日本語が、何ひとつ存在しないのです。
地下鉄は「ちかてつ」なのに地下足袋は「じかたび」、地球「ちきゅう」が震えても「じしん」であって「ぢしん」ではないのです。
語源に関係なく、「ぢ」は徹底的に「じ」に置き換えられ、同様に「づ」も粛清されて「ず」になってしまいました。
調べてみると、昭和31年に国語審議会で決めたようです。審議会の詳しい内容は文化庁のHPで読めます。
ところで最近あるウェブ辞典をみたら、「づ」で始まる名詞が2つだけありました。
「づけ(漬け)」と「づら(カツラ)」。
残念ながらいずれもまだ俗語に近い言葉です。標準語として国語審議会に認知されたら、「ずけ」「ずら」になるのでしょうか。