想定外

東京電力は、3年前に福島第一原発に10~15mの津波を試算していたことが判明しました。

ではこれまで東電の言ってきた「想定外」とは何だったのでしょうか。

どうやら「想定外」には2通りの意味があるようです。

ひとつは、「科学的想定外」

誠実に科学的に検討しても「想定することが常識的でない」もの。

たとえば、マグニチュード10の地震とか、高さ100メートルの津波とか。

もうひとつは、「人為的想定外」

「知識不足で想定できなかった」= 無能

「たかをくくって想定しなかった」= 怠慢

「何らかの意図があって低く想定した」= 欺瞞

東電のいう「想定外」は、こちらのようです。

今回の大地震では、それまでの計算法(気象庁マグニチュード)ではM8.4だったところが、突然に世界標準の計算法(モーメントマグニチュード)に切り替わり、最終的にM9.0になりました。

当時は、だんだんと数値が増えることに違和感を感じるよりも、むしろM9.0と聞いて、さもありなんと、震災の巨大さを再認識したものでした。

巨大地震に対しては、今回の計算法の選択は科学的に正しいとも言われています。

しかしこれが、地震を「想定外」の規模に格上げするための誰かの悪知恵なら、国民を欺く行いではないか、という見方もあります。

マグニチュードでいうなら、1960年のチリ地震がM9.5であったことはよく知られた事実です。

1100年前の貞観地震の際に巨大津波が起きたことも、電力会社は以前から把握していました。

そして現に、東電は10mを超える津波を試算していました。

ところが実際に原発は、これらよりもずっと小さな地震や津波を「想定」して、建設・運営されています。

『無能』や『怠慢』だけでは説明がつきません。