一昨日の判決にはやりきれないものを感じたので書きます。
9年前に東京女子医大病院で行われた心臓手術で、12歳の女児が亡くなる医療事故が起きました。
病院から提出された「内部調査報告書」によって明らかにされた事故原因は、手術を補助するための人工心肺という装置を操作していた佐藤医師のミスでした。佐藤医師は逮捕されました。
私自身も含め、当時の日本中の心臓外科医はこの事故を、「佐藤医師のミスから何を学ぶか」という教訓としてとらえ、以後、人工心肺操作における確認徹底や監視装置の充実に力を注いだものです。
ところがその後の裁判の過程で、事故は執刀医の初歩的な技術ミスで起きたものであるということが明らかにされ、私は愕然としました。
執刀医のおかした致命的なミスを隠し、佐藤医師に濡れ衣を着せた「報告書」を作成した病院の、その隠蔽体質と弱者切り捨ての所業に、私は恐怖さえ感じました。
人生を棒に振って病院と戦い続け、昨年ようやく無罪が確定した佐藤医師が、病院を相手に損害賠償請求をするのは当然のことです。
しかし一昨日、その請求は東京地裁に棄却されました。
理由は「時効」。請求するのが遅かったですね、ということです。